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reading log【夜に星を放つ】窪美澄 著(第167回 直木賞受賞作)

夜に星を放つ
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2022年6月17日「第167回直木三十五賞」の候補作が発表された。発表直後、朝の五時から各本の紹介文を読み漁り、どれを読むか急いで選んだ。

あらすじから「死をテーマに置きつつも心が暖まる物語」って印象を受け、この【夜に星を放つ】に決めた。

遅読なので、受賞発表までに読めるのは1冊だけだろう。今読んでる「月は無慈悲な夜の女王」は一時中断。お祭り(直木賞)を優先した。


2022年7月20日(水)『夜に星を放つ』が第167回直木賞に決定。正直驚いた。

第167回 直木三十五賞 候補5作品

  1. 河﨑秋子「絞め殺しの樹」(小学館)
  2. 窪美澄(くぼみすみ)『夜に星を放つ』(文藝春秋)
  3. 呉勝浩「爆弾」(講談社)
  4. 永井紗耶子「女人入眼」(中央公論新社)
  5. 深緑野分「スタッフロール」(文藝春秋)

今年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」で、北条家を中心にしたお話。「女人入眼」が 北条政子がらみで最有力候補なんだろう。時流に乗ってる感じだ。

log・考察

この短編は、夜空の星や星座からインスピレーションを得て、イメージを膨らませているようだ。それぞれの話にからませてテーマや表現したい感情を込めあるらしい。

真夜中のアボカド♊ふたご座

ふたご座(Gemini)、冬の星座。

暗いカストルが兄ちゃんで、明るいポルックスが弟だそうだ。お話の中では、ふたごの主人公を象徴させる感じで2回登場する。

登場人物たちが真剣に悩んでいるのは解るが、あまり緊張感なく深く考えることもなく のほほんと読み終えた。作者もきっと おっとりした人なんだろう。

どちらかと言えば、主人公がモーレツに努力して何かを強烈に目指しているようなお話の方が好みではあるが、たまにはこういうのも良いか。

銀紙色のアンタレス♏さそり座

さそり座(Scorpius)、夏の星座。

星とお話の結びつきはちょっと薄くて強引な感じだった。しかし、こんなにウブで きれいな心の少年がこの世にいるのか。

作者は女性。16歳の男子の気持ちや、飢えた心が露ほども解っていない感しか読後に残らなかった。解ろうともしてないし、意図的に目を背けているような印象すら受ける。

素敵なお話だとは思う。細かい描写もきれいだった。だけど、さすがにこれはちょっと夢を見せすぎではないだろうか。

真珠星スピカ♍おとめ座

おとめ座(Virgo)、春の星座。「おとめが左手に持っている麦の穂」に位置するのがスピカ。

娘目線での母親が亡くなった後のお話だが、お父さんもちょくちょく出てくる。

こういう話を読むと、ついつい自分の嫁さんが死んじゃったらどんな日常になるのか想像してしまう。あまりリアルに想像できないが、「シーン」とした空虚なイメージが強い。

この話、長編で読んだらしんどいだろう。短編で良かった。

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湿りの海🎵こと座

こと座(Lyra)、夏の星座。 ベガは、七夕の「おりひめ星」

この話は「こと座の神話」、オルフェウスの悲劇を引き合いにしたもの。切ない話で、ラストも救いがなく感じた。可哀そうに。

出てくる人たち皆だらしなく、身につまされた。なんかいろいろ遠回しであまり好きな作風ではない。

「エティエンヌ・トルーベロ」という画家の「湿りの海」という絵の話が出たので調べてみた。実在の画家だった。

エティエンヌ・レオポール・トルーヴェロ

19世紀の画家・天文学者。

作中では「アマチュアの天文学者」とあるが、検索して調べる限りプロの天文学者。アマチュアなのは昆虫学のほうらしい。

ちなみに、

「湿りの海」というのは、月の表側にある盆地につけられた名前だった。検索して拡大写真をみると、つるっつるで凪いだ湖みたいな地面になっている。

この話の中では、何の象徴として使われたのだろうか?疑問だ🙄

赤丸のあたりが湿りの海

星の まにま に💫夏の大三角形

戦争と虐待を ぬるく遠回しにディスっているのか。言いたいことは解らんでもないが、何か主張がピリッとしないって印象を受けた。5作中の後半3作がこの感じを受ける。

主人公の子供の語り口調だが、ところどころ子供らしくない表現や熟語の使い方が目立ち、じゃっかん鼻につく。もっと上手に徹底するのは難しいのだろうか。故意か?

敢えてやっているのか。直木賞の最終候補に残るくらいなんだから、きっと自分の理解が及ばないのだろう。

所感

夜に星を放つ
著者 窪 美澄(くぼ みすみ)

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

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電子書籍Amazon楽 天

遅読の自分が さらりと読めた。たった20日程度で。 並行して読んでいる「月は無慈悲な夜の女王」より圧倒的に読みやすかった。

作者は、いじめや虐待を主題にして問題提起なりをしたいんだろう。最後まで読んで強くそう感じた。

書き方が遠回しというか、主人公たちの主観や心が良い人すぎて作り物っぽくも感じてしまった。若い女性へ向けて書かれたのだろう。オヤジには向かなかったか。

読解レベルも低いのだろう。反省して、もっと いろいろ読んで作者の真意を深読みできるように鍛えていきたい。改めて、そのように決意をさせられた一冊となった。