鳥の卵がかえり、生まれたてのヒナ🐣が最初に見たものを親だと思い込む現象を「すり込み」というのはあまりにも有名。
この本は「すり込み」発見からノーベル賞受賞までを書かれている本だと思っていました。
が、違いました。
読み始めるとそんなお堅い感じではなかったです。
学術的にも高度な発見がなされていく様子が、コミカルに面白く、そして動物愛にあふれる語り口で描かれた心温まる本でした。
これを読むと、ぜったい動物を子供から育てたくなる!😍
reading report ~ 前半
まえがき
自身で苦労して確かめた事実ではなく、聞きかじったいい加減な情報で行動し、
それを本に書くような当時の識者たちへの怒りが書いてありました。
実利をを求めるだけで愛がないと言いたげでした。
⒈ 動物たちへの憤懣(ふんまん)
動物の研究は、
「放し飼いで、動物たちが自由でストレスのない状態を観察するに限る!」
って感じのことが書いてあります。
放し飼いでの苦労話がコミカルで楽しいです。
放し飼いにするために、自分の娘のほうをオリに入れた話は有名なエピソードらしいっス。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];おり](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/03/image-2-e1585480515416.png)
※勝手なイメージ
親しくなったカラスが、ふわりと肩に降りてくるくだりはよかったな~。
子供のころから憧れてて、アニメの中だけかと思ってた。
実話だからねコレ。
ハイイロガンの観察描写もとても愛らしい。
不安と強がり、びっくりして慌てふためく様子。
首を伸ばすしぐさは親しみをこめた挨拶。
犬がしっぽを振るのと同じ意味らしい。
⒉ 被害をあたえぬもの--アクアリウム
冒頭のアクアリウム howto で、即ひき込まれたっスよ。
やってみたくてしょうがなくなりました🤠
もっと早く、子どもの頃にこの本へ出合っていたら良かったのになぁ。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];アクアリウム](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/fish-2777953_640-e1585918863488.jpg)
エアポンプを使うのは邪道ともとれることが書いてあります。
人工的な手を加えず、生物学的な平衡を保つ。それがいいんだそうです。
なるほどね。
この本で初めて知ったんだけど、
実は熱帯魚は、そこら辺にいる淡水魚よりも、飼うのがやさしいそう。
だから、やる人が多かったのか。ちょっとびっくり😲
⒊ 水槽の中の二人の殺人犯
二人の殺人犯とは、
「ゲンゴロウの幼虫」と「ヤンマの幼虫(ヤゴ)」のことでした。
読んでいると、
「ゲンゴロウの幼虫」は下品な悪人で、「ヤンマの幼虫」上品なハンターみたいな書きかた。
作者の「好み」がモロに出ているように感じられておもしろい。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];幼虫](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/image-5.png)
⒋ 魚の血
興味がわいてネットで調べながら読んだから、すごく時間がかかりました。
とにかく愛ある文章だと感じるのでした。
2匹のトウギョが対峙したくだりはもう、科学書を読んでるんだか、物語を読んでるんだかよくわからなくなるほど。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];トウギョ](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/beta-4701894_640.jpg)
インターネットで、トウギョの生殖や戦いの動画を探して観たけど、この本の文章には敵わなかったね。
「ひれを広げる音が聞こえるよう」とか「輝くような情熱のダンス」、「太古からの儀式化の産物」など、表現がイイ。
トウギョの「恋の輪舞」が始まるまでの描写は胸がときめきます。
生殖のシ-ンは、ネット上に動画がふんだんにあって、すごくいい動画を見つけました。
9:12くらいからが見頃ですよ。
他にも、
二対の宝石魚の夫と妻を入れ替えたりもする。お互いを認識できるのか、気が付くのかを試すために。
育児の様子も書いてある。
テレビでよくある、悶えるほどかわいいペット映像に負けずとも劣らない描写でしたよ。
良かったところはもっとあったけど、長くなりすぎたのでそろそろ止めときます。
⒌ 永遠にかわらぬ友
コクマルガラスの章です。
全編を通じて、この章が一番長いようです。
他の章が、だいたい 20ページくらいなのに、この章だけは 70ページ近くあります。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];コクマルガラス](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/kokumarugarasu.jpg)
作者の思い入れをとっても強く感じる一章。
この章は良かったなー。
ひょっとしたら一番好きかも。
ペットショップで買って育てた、コクマルガラスの雛。
卵からかえしたわけではないけど、すごくなついたそうです。
ひとりにすると「チョック」と叫んで寂しがるくだりがイイ。ボクも雛から育ててみたい。
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];コクマルガラスの雛](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/kokumarugarasuhina.jpg)
でもね、
子どもの頃、手乗り文鳥を飼ったことがあるけどね。
注射器で、文鳥の雛に餌をあげた記憶があります。
確かに手に乗るようになったけど、この話のようにはなつかなかったな~。逃げちゃったし。
猫に食べられた?😅
ここでいよいよ「刷りこみ」が出てきます。
卵からかえって「初めて目に入ったものだけ」を親と思うシステムだと思っていたけど、それだけでもなさそう。
ゾウガメと一緒に育った、オスのクジャクの例でした。
あとからメスのクジャクを入れてあげたそうです。
オスのクジャクは、目もくれずゾウガメだけにしか求愛しなかったそうです。
一見笑い話ですが、ボクはすごく切なかった。😢
![ソロモンの指輪[動物行動学入門];クジャクとゾウガメ](https://jikkyo-lt.com/wp-content/uploads/2020/04/image-14.png)
ここから、
「刷りこみ」から外れた話として『コクマルガラスが人間に惚れる』はなしになってくる。
実にチャーミングな話でした。
耳の穴へゲロを詰め込むのは傑作。🤣
ローレンツさんは、コクマルガラスの一羽々を、顔や雰囲気で見分けることができたそう。
目印・識別なしで。
それにはやはり、相当の苦労や、時間をかけたそうですね。
ちなみに、とてもいいコクマルガラスの動画を見つけたのでつけときます。
本当に長い間、絶えず密接に触れ合いながら彼らと暮らす苦労を楽しんだ。
といった感じで、こと細かく書いてあります。
もはや、偉人伝や啓発書に近い。
頭のよい動物たちは「人間的」にふるまう。と言いながら、
人の良くないふるまいを「動物的」と言って、さとしているようにも読める。
そんな文章を処々に感じます。
今まで弱々しかったメスが、強いオスと結婚した途端に態度エルになるそうで、高じて周りをイジメることもあるようです。
TVドラマみたい。
コクマルガラスの恋愛についても詳しく書いてありました。
これがまた、よく観てるんだよね。
さすがプロというか。陳腐な言い方だけど、愛としか言いようが見つからないな。
求愛するオスと、言い寄られているメスの目線の演技から、受け入れを意図する行動のプロセスをロマンチックに描いてある。
へたな恋愛ドラマを見るよりよっぽどときめきます。

コクマルガラス
Emmi NummelaによるPixabayから画像
結婚後の夫婦の様子なども書かれています。
夫がやさしく妻に食物を贈る、妻はやさしく夫の毛づくろいをする、ローレンツさんのきめ細かい描写でありありと読み取れます。
しかし、
コクマルガラスの不倫愛の様子ももれなく書かれてましたね。そんなことあんのっ?って、ローレンツさん自身も驚いためったにないことだそうです。
そして数年後。
不倫のすえ姿を消していたオスが妻の元へ戻り、妻はいちもにもなく迎え入れ、仲睦まじく元のさやに収まる様子が美しく描写されていました。
最後が少し寂しい終わり方だったけど、すごくいいお話です。
昔から「カラスを飼ってみたい」「卵をかえすところから飼ったらどうなるのだろう」とよく考えていました。
頭が良いなら友達になれるのでは?なんて。
ゴミ捨て場でのふるまいとか、ずるがしこいイメージですよね。
でも、「カラスは縁起が悪い」とか、ヒッチコックの映画『鳥』のイメージがあって、怖い気持ちもあるんだよね。
いいブログを見つけました。これから気にしておきしたい。
そして、いつか里親になってみたい。
⒍ ソロモンの指環
ソロモンの指環というのは、
旧約聖書に出てくる「動物と話せるようになるアイテム」だそうです。
ローレンツさんは、そんなものなくても自分は動物と話をできると豪語します。

動物たちの鳴き声は、
相互理解の手段とはなっているものの、条件反射的なものだと言っています。
「気分感情声」や「かすかな合図」につられて基本行動をとるのだと。
他の人(生き物)を意思をもってうながし、行動を求めるようなことはしないとも理解できました。
ただ、その理解には収まらない例外もいくか語られる。
ボクにとってはそんな章でした。
犬だけは別だと、面白いエピソードで語られていましたね。
⒎ ガンの子マルティナ
卵の中でカリカリゴソゴソと音がする。そして生まれてくる。
やさしく物語ってあります。
生まれたヒナは濡れた膜のようなものに包まれて醜いが、みるみる内にフカフカまんまるの綿毛のたまのように。
すごく愛しげに描写してあります。
ユーチューブでかなりイメージに近い動画を見つけました。
7:10くらいの所から観るのがオススメです。
そして、いよいよマルティナが生まれ、ローレンツさんを親と認識します。
ローレンツさんが「自分は親と認識されたんだ」とはっきりと気づき、この小さなガンを養子にする決心をするシーンになります。
ここら一連のマルティナの挙動が実にかわいらしい!たまりません!😍
ローレンツさんをじっと見つめたあと、あいさつをはじめるところはすっごく良かったです。😂
カワイ過ぎる。🐣
ローレンツさんは、よく擬音を使って「気分感情声」を表現します。
コクマルガラスの時もやってたけどシチュエーションも良さもあってか、この章のマルティナの「気分感情声」が最高でした。
ヴィヴィヴィヴィヴィ?(ガンのヒナが寂しがり母をさがす声)
ピープ・・・ピープ・・・ピープ・・・(みすてられたちっぽけなガンのなげき)
ヴィルルルルルル(ガンのヒナが眠り込む気分感情声)
とにかく、かた時もローレンツさんから離れようとしないマルティナの挙動が可愛く可愛く、メチャクチャに可愛らしく描かれています。
ほんと、死ぬまでに一度はガンをヒナから育ててみたいな~。🥰

ハイイロガンのヒナ
Bärbel BauerによるPixabayからの画像
小さなヒナから若鳥へ育つ途中で見られる、調和のとれぬ中間型の姿がとても感動的だそうです。
大きすぎる足、太すぎる関節、なまいき盛りの年ごろのゴツゴツした身ごなし。
178ページより
と書かれていますがこの期間、「なまいき盛りの週間」としか言えないほど短いそうです。
写真を探してみましたが、ブログに使えるフリーの写真は見つかりませんでした。
おそらくこれだと思った、ピッタリおみごとな写真を撮影されたブログを見つけたので紹介しておきます。
≫≫ ハイイロガンのヒナ(ドイツ在住の日本人の方のブログジージのドイツ散歩より)
このブログの一番上の写真が
「なまいき盛りの週間」だと思うな。
reading report ~ 後半
⒏ なにを飼ったらいいか!
この章では、ペットを飼うときの心得を指南してくれています。
ちまたでは、動物をペットとして飼うこと自体に是非の議論があるようですが、この本を読むと吹っ切れると思います。
ただ、
一度飼ったペットに対し、失敗して無責任な態度をとる人たちが後を絶たないのも確か。
そんな失敗をしないように、ペットにする動物選びにアドバイスしてくれます。
おすすめの飼いやすい動物として、具体的にもいろいろと書いてくれていますよ。
心のかよう触れ合いが欲しいならイヌがいいそうです。
たくさん散歩に連れて行ってあげれば、心のかよう友情がうまれてイヌもすごく幸せ。
ほかにも、
ホシムクドリや、マヒワがなど、どのように飼いやすいか具体的に説明してありました。
特にマヒワは例外的に、ヒナのころからじゃなく、成長してからでも馴れるらしいです。

ホシムクドリ
Natalie ChaplinによるPixabayからの画像

マヒワ
Зина ЧаушеваによるPixabayからの画像
そして、
ゴールデンハムスターをいち押ししてましたね。
底抜けに陽気で、愛嬌たっぷりだそうです。
動画を調べてみたら確かにカワイイ💘
ほかにも、
いろんな動物についていろんな苦労話をしてましたね。
それもこれも、読んだ人に最初に飼う動物選びで失敗して欲しくないためだそうです。
詳しくは、本編を確認しましょう。
⒐ 動物たちをあわれむ
人間が動物をオリに入れて動物園をやっているのを責めているように感じました。
特に、白鳥の翼を部分的に切断し、飛べないようにしておくところ。
白鳥は季節になったら何度でも飛ぼうとするそうです。
でも飛べない。
同情する必要がない動物もいるようで。
ものぐさなライオンはオリの中でも大丈夫そうだとか。
ヨーロッパイヌワシは「ワシの中でも指折りのばか」なので大丈夫だろうとか散々の言われようでした。(笑)
⒑ 忠誠は空想ならず
おもに、イヌのことについてふれています。
イヌにも、オオカミ系とジャッカル系がいて、性格が違うそうです。
- なかなかなつかないけど、一度なつけば一途で礼儀正しいオオカミ。
- すぐなつき従順でカワイイが、誰にでも媚を売り行儀の悪いジャッカル。
一言で言ってしまうとこんな感じで紹介されてます。
この2種が結婚して、
オオカミ系の妻が、ジャッカル系の夫に操を立てたエピソードは良かったっスよ🤠
ちなみに、
どの犬種がオオカミ系で、あるいはジャッカル系なのか調べてみたけど、詳しくリストアップしているような文献は見つからなかったっスね。
けど、いい記事みつけました。
≫≫オオカミの遺伝子にもっとも近い犬。それはなんと、皆さんの身近にいたあの子だった
2021/7/18に追記🤠
「オオカミ系」の様子が良くわかる本をみつけました~。🥳

reading report【犬と暮らした季節】~イヌの愛で方、愛し方がわかりすぎる本
今後もし、犬を迎えるとしたらとても参考になると思った。犬のみならず、動物全般に対する気持ちの持ちようを教えてくれる。
⒒ 動物たちを笑う
マガモでは、ハイイロガンの時のように「すりこみ」が起きにくい。
マガモは声で親を識別するかららしいけど、やはりここでもローレンツさんの楽しいエピソードが披露されます。

マガモのヒナ
Alexas_FotosによるPixabayからの画像
オウムのエピソードもありました。
迷子になりそうになったオウムを、ローレンツさんが「鳴き声マネ」で呼び戻すします。

⒓ モラルと武器
動物たちのけんか・闘争を詳しく比較・分析した内容になってます。
多くの動物は、
闘争をして負けを悟ったとき、一番の弱点を無防備に相手に差し出すそうです。
殺してくれと。
そうなると、勝者はそれ以上攻撃できないそうです。本能的に。
最後に、人間の戦争とも比較して警鐘を鳴らしています。
平和的とされる「ハト」や「シカ」は限度を知らず、
恐ろしい牙をもつ「狼」の方が、降参さえすれば相手を殺さない。
動物たちが進化の過程で必殺の武器を発達させた場合、
「種の存続をおびやかしかねない」武器の進化と並行して、
その使用を妨げるような社会的抑制を持たざるを得なかったのだとローレンツさんは言う。
そして人間は...。
いつかきっと相手の陣営を瞬時にして壊滅しうるような日がやってくる。
ローレンツさんの論文;動物のモラルと武器より
全人類が二つの陣営に分かれてしまう日も、やってくるかもしれない。
その時我々はどう行動するのだろうか。
ウサギのようにか、それともオオカミのようにか?
人類の運命はこの問いへの答えによって決定される。
reading report ~ 読後
今年2020年の1月から読み始めた本でした。
同年9/5の本日読み終えたので、約8か月かけて読み上げたわけです。😅
いくらボクが遅読とはいえ、普通こんなにはかかりません。
なぜこんなに時間がかかったか。
ハマリ過ぎたからです。
途中で何度も引き返して読み返す程ハマったのは初めての経験です。
途中で気になった情報(動物)の写真や動画を調べながら、かつ、ブログへ書き込みしながら読み進めたのも初めてでした。
1冊の本を読むのに、こんなにエネルギーを使ったのは初めてでした。
漫画を含めても、生涯トップ3に入るお気に入りです。
なつく小動物を飼おうか🤠
ローレンツさんのおすすめであれば、ゴールデンハムスターかな~。
でもあれ、ハム太郎だよな~。
イヌがいいかな。
ジャッカル系もいいけど、やっぱオオカミ系の方が好みかな。
犬も人間も、律儀な方がいいでしょー。
でも愛想も大切だよねぇ。
Tiktokみてると、ネコの方が良く見えるんだよね。
まあ、定年退職後だけどね。
ガンと、イヌと、ネコを同時に赤ちゃんから飼いたいな。
なつく小動物を選ぶのではなく、好きな子がなくつように接したい。
そんな日々を夢見てしまいました。
ローレンツさんの他の作品
調べてみたら、けっこうあるみたいです。
けど、少し攻撃的なタイトルが多いな。
今回の作中に出てきた「動物のモラルと武器」は、日本では売っていないみたいです。
次はどれを読もうかな。
※
下の6冊は、古い本なので紙しかないみたいね。