あいかわらず、静かで品の良い雰囲気。
言葉が柔らかいから気付きにくかったけど、よくよく考えてみると内容は案外きついイシグロ作品。
この「ほの明るいどんより感」が、魅力です。
今回もなかなかの衝撃を受けましたね。
子供の頃の、その当時ですら隠れていた罪悪感を掘り起こされましたよ。
それでは、レポーティング開始!🤠
※
ネタバレします。結末を知りたくない方は、この先読まない方がいいです。
reading report
たまたま本屋へ行ったら、たまたまこの本の発売日だった。発売されることすら知らなかったのに。
運命を感じた。おおげさ?笑
第一部 P35;店長さんの台詞
ときどきね、クララ、今みたいな特別な瞬間には、人は幸せと同時に痛みを感じるものなの。すべてを見逃さずにいてくれで嬉しいわ
何かふつふつと、優しそうでいて灰色の予感を感じさせる。
まだ序章だけど、自然に「何か」を読み取らせる手腕。
さすがだ。イシグロマジック。
2021/3/25
第一部 P60;疲れた母親の描写

疲れた母親の様子を表現するのに
風に吹かれながら高い所にとまっている鳥の雰囲気
という描写があった。
見たことはないけど感じとれる。
耐え忍んでいる心。
63ページまで読んだところでわかってくる。
病気の女の子と、優しいAIロボットのストーリーなんだという事。
う~ん、楽しい。
2021/4/3
第二部 P100;優しいだけの話じゃない?
病気の女の子と優しいAIロボットのストーリーだと思ってた。
が、そんな優しいだけの話じゃないみたい。
女の子ジョジーの病気と、ロボットクララの出自か製法あたりに何か大きな黒いものがありそうだ。
「わたしを離さないで」に似た匂いがしてきた。
2021/4/11

第二部 P122;ジョシー
ジョジーの態度の変化。
子供も大人も、集団になると意地悪になる。
マイノリティをあざける様子が描かれていた。
向上処置? 重要そうなキーワードが出てきたがまだ全貌は見えない。
これから徐々に静かに明らかになっていくだろう。
うん、イシグロワールドだ。
2021/4/18
第二部 P158;AIの心
AIロボットの目でみた人間と、そこから生じる感情。
「AIの心」を通して人の心の動きを表現する試みだよねこれはきっと。
そしてそれはとてもうまくいっている。少なくともボク🤠には。
すっごい違和感。
はじめての感情を味わえてる。😊
2021/4/25

(考察)「AF」とは人工の友だち
作中に何度も出てくる「AF」とは、「Artificial Friend」のことだ。
ボク🤠が見落としているかもしれないけど、恐らく作中には一度も説明がなかった。
オートマチックフレンド(automatic)かと思ってたけど違ってたね。
Artificial=人工的な
Friend=友達
人工的な友だちって事ね。

情報元;THE NEW YORKERより
サイト;Kazuo Ishiguro Uses Artificial Intelligence to Reveal the Limits of Our Own(訳;カズオ・イシグロ、人工知能を使って人間の限界を明らかにする)
(考察)向上処置とは
これまた、「向上処置とは」的な説明は本文中にはなかった。
無いなりに解釈すると、
「子どもの知能指数をあげる治療」
「健康を害するリスクがある」
「まれに命を落とす」こともあり、ジョジーの姉は恐らくこれで命を落とした。
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第三部 P226;人間以上やね
クララ目線で、バグって視界が崩れている描写がたびたび出てくる。
ボク🤠自信にもたまにある不思議な感情の揺らぎ(っていうか、崩壊に近いかな)を思い起こさせる。
何かを隠喩しているのだろうな。
でも何なのかがわからない。
いやわかっているのかもしれない。
でも言葉にできない。
しかし、
それにしても、本当に一生懸命ジョジーを助けようとしてる。
本当の友だちだ。いや、人間の友達以上だ。
2021/5/9
第三部 P257;狙い通りなのかな
クララの空間認識がバグっているのか、超常現象が起こっているのか、よく分からなくなってきた。
読んだ人がこう感じてしまうのも狙いの内なんだろうな。
2021/5/17
第四部 P283;ヤマ場が近いな
ジョジーの母親と父親の様子がおかしい。
これから何か恐ろしいことが起こるんじゃないのか。
まさか人格のダウンロード!?
よからぬことが始まろうとしている。
2021/5/31

S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像
第四部 P324;ヒヤヒヤする
クララが自分の身を犠牲にしてジョジーを救おうとしている。
AFが主人のために身を呈す。
日本のアニメやマンガを見慣れているボク🤠にはさして珍しくはない。
でもやっぱりヒヤヒヤする。
このシーンには感動ではなく、何か暗いものを隠喩させている気がするなぁ。
2021/6/5
第六部 P414;罪悪感
子供は成長し、やがて大好きだったオモチャは遊ばれなくなる。
忘れられ部屋の隅でホコリをかぶる。
クララが自ら屋根裏部屋へ身を置いたこのセクションは、ボク🤠にどんな感情を生じさせたのかな..。
もうひとつ。
クララが冷蔵庫の横だったり、廊下へただただ「立つ」という仕草。身体の置き方。
この「ただ立つ」シーンでも感じていた。
罪悪感?そう、心にチラリとよぎったのは罪悪感だった。
2021/6/11

Gordon JohnsonによるPixabayからの画像
(考察)子供のおもちゃの心と身体
登場人物の言動には、読む者にある一定の感情を思い起こさせるための隠喩を施してあるよね。
ラストの方では、AFが子供のおもちゃでしかなかったんだと強烈に感じさせる。
おもちゃへ人間と同じ「こころ」と「からだ」、そして「終わり」の瞬間を与えて、どんな感情を読む人に与えようとしたんだろ。
ボク🤠も漏れなくその感情を抱いたんだろうと思うが言葉にできない。
意識をもったお友達ロボット「AF」の生き様。
言葉にできない気持ち。
同情とか憐憫とかそんなシンプルなものじゃないよな~🤔
2021/6/17
この物語に出てくるような意志を持ったお友達ロボット「AF」は、今後世に出てくる可能性は十分にあるだろうね。
作者が、最後の方から突然におわせ始めた結果は想像できなかったな。
想像させないように書いていたに違いない。
まさか、生きたまま捨てられるなんて...。
「姥捨て山」(うばすてやま)という映画があったが、あれは捨てに行く息子に罪悪感があった。
このお話は、捨てる側のジョジーに罪悪感がない。
悲しんでいるが、自分が寂しいだけだ。
それは、捨てる相手が おもちゃ、つまり「もの」だからだ。
途中でうっすら感じた罪悪感はこれだったか~。イヤ、とにかくこの最後のシーンは当分頭に残っちゃうなぁ。
感情に与えられたインパクトが強すぎる。
寂しい。
2021/6/25
最後に
だいたい3か月かかって、ようやく読み終えた。あいかわらずの遅読だ。
そのかわり、より深く読み込むことを心掛けている。
ホントはあと一回、二回と、繰り返し読んだ方がいいんだろうな。時間がなくてなかなかできんけど。
何度も言うけどイシグロさんの作品は、静かで品の良い雰囲気だと思う。言葉が柔らかいんだよね。
だから気付きにくかったけど、よくよく考えてみると内容は案外きつい。
ある意味、超がつくほど残酷だったな。
「人間の友だち」以上に友だちだった「もの」を、意識のあるまま捨ててしまうなんて。
「AIを発展させるとこうなるんだよ」って、予言にも感じた。
深く考えさせさられただけど、言葉にするのはいつも難しい。
この言葉にしがたい感情を大切に胸にしまっておこう。
いつか、ハッと閃く事もあるだろう。
今回もいい体験をさせてもらいました。
2021/7/4
映画化のお話
映画化も、ほぼ確定しているようだね。ハリーポッターを製作したプロデューサーが動いてて、草稿もできているらしい。
監督は、タイカ・ワイティティ監督(ニュージーランド)で交渉中みたいだ。
ボク🤠はあまりよく知らない人だけど、結構有名な監督さんらしい。
「ジョジョ・ラビット」というのが一番有名なようだ。監督兼、ヒットラー役で、元々は喜劇役者なんだって。
情報元によれば、ワイティティ監督は2024年にスターウォーズを撮影する予定があり、決まれば その次にクララとお日さまの製作になるという。(文章が少し紛らわしくて読み取りにくい)
情報元サイト;映画.comより
「タイカ・ワイティティが監督か カズオ・イシグロの小説「クララとお日さま」映画化」
※
こちらのサイトでは、「Artificial Friend」を「人工フレンド」と訳されてる。なるほど、うまい。🤠